アルベルゲゲゲ! (マリロー)
7月にお世話になった
「アルベルゲ・エル・ガレオン」(カミーノ北の道)でのある夕暮れ時。
連日小雨続きで洗濯物が乾かず、
キッチンは洗濯・乾燥機(有料)の順番待ちで
パニックになっていた。
そんな中、わての知らぬ間に
バイオリン弾き(ドイツ女子)とギター弾き(オランダ男子)のペリグリーノがやってきたらしく、
ガレージは彼らのちょっとした演奏会場に♪
↑ このバックの洗濯物が、いかにもカミーノ!アルベルゲ!
何しろ荷物を1グラムでも軽くしたいペリグリーノ、
汗でびっしょり汚れた服を、毎日洗って乾かすのが仕事。
↑ 写真はオープン前だけど、ガレージとつながったこのサロンも、
ペリグリーノだらけでごったがえしていた。この日も42ベッド満員。
外でキャンプをするペリグリーノも、シャワーを利用しにきたりして
なんだか収集がつかない状態の中、
わてはこの場で
ペリグリーノの諸対応に追われながらも
キッチンのドアの外にしゃがんでいるドイツ人女性がなぜか
涙を流して泣いているのが気になり、声をかけるべきか悩んでいた。
外の音楽に感動しているのだろうか。
キッチンでは洗濯機担当のオーナー娘が、いつものように
忙しさに怒っているのか、どなり声がきこえてくる。。
続く演奏会、
走り回りるオーナー孫クラウディア(3歳)と愛犬ルパ。
皆が音楽を楽しむ中、
ベッドにあぶれたぺリグリーノが、壁に貼られた
「近隣ホテルのリスト」に片っ端から電話をかけ
宿をさがしていた。ごめんね、満室で。
↓ 左の壁に手を当てて電話をかけている女性がそう。
日は長く、この時すでに夜9時すぎ。
乾かない洗濯物、
キッチンから聞こえてくるどなり声、バイオリンの音色、
また足ってくるクラウディアとルパ。
そんなすべての混沌を眺めながら
あー、
何てごちゃごちゃした、
なんて愉快なアルベルゲなんだ!!
とわては妙にその雑踏具合に、感心していた。
演奏会は終わり、泣いていたドイツ女性もいつの間にかいなくり、
わてはキッチンにいた同僚の
ジュリアン(わてが8ヶ月前に捨てたモチーラを持っていた仏男)に声をかけた。
「トモコ、全騒動が終わってから来たね(笑)。
すごかったんだよ。あの泣いてたドイツ女はさー、ペリグリーノらしいんだけど、家族とこの町のいいホテルに泊まってて、洗濯機だけ利用させてくれって、大量の洗濯物を持って来たんだ。いいけど順番待ちだし、操作はこっちがやるから待っててくれってマリロー(オーナー娘、洗濯担当)は言ってるのに、急げ急げってうるさくて、しまいには『夫と子供たちの洗濯物もあるの、今日中に乾かしたいの。なんでこんなに歩き疲れているのに待たなきゃいけないの?お願いだから先に洗濯機を使わせて!』って泣きながら言うわけ。そしたらもちろんマリローもいつも以上にぶち切れて、『あなたねー! なんで、先に来て待ってる人がいるのにあなたを優先しなきゃいけないの? できるわけないでしょ?!1日中歩いてこんなに待たされてって......勝手すぎない? 誰もあんたに歩いてなんて頼んでないわよ! あたしたちだってボランティアでやってるのよ。働いても働いても終わらない、ここにいるジュリアンだって毎朝6時に起きてペリグリーノに朝食出して、寝るのはペリグリーノよりずっと後なのよ。なんで最近、自分のことしか考えられないペリグリーノだらけなの。昔は何か手伝いましょうかって言ってくれる人ばっかりだったのに......』って怒ったさ。それでもドイツ女は泣きながら座って待ってたんだけど、そしたらあろうことか、そのあと20分後ぐらいに洗濯機が壊れちゃったの。止まっちゃったんだ、そう、この新しい洗濯機がだよ、機能停止。ドアも開かなくなっちゃった。明日修理呼ばなきゃ。そんで結局ドイツ女は、もっと泣いて出て行ったんだよ」
ふーーーーっ。
↓ そんなキッチン。マリローはドイツ女を思い出して
プリプリ怒りながらも、明日の朝食のコーヒーの仕込みを開始していた。
↑ 洗濯機の前面ドアから水がもれたらしく、
床の雑巾がその奮闘を物語っていた。
オーナーの娘マリローは、
子持ちになった今も、若いペリグリーノから
ラブレターをもらっちゃうぐらいの美人だ。
かっこいい若い男が来ると
「おっ、あんたいい男だね」
「キャー、写真撮らせてよー♪」と頬がゆるむ。
掃除の時はいつも「暑い!」といって
Tシャツを脱ぎ、ブラジャー一丁になって
必死にモップをかける女。
腹がたつことがあると、客だろうが年配の爺さんだろうが、大声でぶち切れる。
(客をどなるのはこのアルベルゲの名物♪)
だけど、
お金がなくても可愛気があるお利口ペリグリーノには
ご飯を食べさせてあげたり
ただで泊めてあげたりする。(男前じゃなくてもね!)
それは母ちゃんソフィア(83)も同じ。
わてにとっては初めてのタイプで、
映画で見たことがある
"スペインのいい女"のイメージのまんまに見えたよ。
わてがカタコトのスペイン語で働きたいと電話したら
まだ会ってもいないのに、
彼女が「ありがとう、ぜひ来て!」って言ってくれたんだ。
オーナー・ソフィア83歳、
次女マリロー48歳シングルマザー、
孫クラウディア3歳
(そしてこの家で恐ろしく嫌われている父ちゃんルイス79歳!)
女3世代のアルベルゲ、
昨日久しぶりに電話したら、北はもう寒くて、
「今日のペリグリーノはたった6人」だといっていた。
そして「ここはあなたの家よ、いつでも帰っておいで」って。
そしてジュリアンは9月10日に、フランスの勤め先のホテルに戻る
はずだったのに、全部やめて(捨てて?)、
一冬このアルベルゲにいることになったそうな。
なんだよ、ジュリアン!
しかしわても、もう戻りたい場所とか行きたい場所って
よく分からないけど、
この家族にはまた会いに行きたいと思うわ。
チャオ♪