ジュリアン!

2015年10月19日 12:31

雨が降る朝は、

自分がペリグリーノ(巡礼者)じゃなくて本当によかったと思った。

こんな雨の中、歩きたくないよー!

雨だね、

だけど早く行かなきゃ!

(追い出しモードの8時半)

わての同僚ジュリアン。↓ 

わてが書いた、オスピタレーラ(ボランティア)募集の

ポスターを見て、ここに留まったフランス男。

フランス、ノルマンディのある風の強い海の町の、

小さなビジネスホテルで働いている、

いや、働いていた。

この夏、1ヶ月の休みをもらって

ピレネー山脈のトレッキングコースを歩いていたら

山の中でカミーノ・デ・サンティアゴの看板に遭遇。

その矢印につれられて歩いているうちにカミーノ・デ・ノルテの道に入り込んだ。

道中、自分の大きなバックパックを捨てて、

誰かの忘れ物の小型のリュックを宿のおやじにもらい

サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指すことに。

その小型リュックが、

わてが去年の冬に捨てたバックパックだったことは何度も話したべ。

(おさらい・デ・モチーラ)


そしてなぜか、このアルベルゲにゴールイン。

「ボクのサンティアゴはここだったのかもな」

ジュリアンが来たことで、

わてひとりだった

オスピタレーロがふたりとなり、

足痛に苦しんでいたオーナー・ソフィア婆(83)は

毎朝6時からの朝食準備をやらずにすむようになった。

(この宿は朝食付)


ジュリアンはホテルマンのプライドか、

ソフィア婆が築いてきたやり方を完全無視して仕切り始め、

「朝食はひとりでできるし自分のペースでやりたい、トモコは7時まで寝てていいよ」

とか言い出した。……へっ?

そして午後2時のオープンになると、

待機していたペリグリーノを集めて

「ウェルカムトゥー、アルベルゲ・エルガレオン!」

とか大げさなスピーチをやりだすようになった。ぷぷっ……。


わてが受付をして、受け付けをすませたペリグリーノを

ジュリアンが館内へ連れていき案内する。

ふだんは無口な男なんだけど

この時も、ディズニーランドの

マークトゥエイン号の案内係ぐらいに

奇妙なハイテンションだった。


「おーっとっと、ちょっと待ったーー!

ここから先は

カミーノで使った靴で入っちゃダメ!

おうちでもママが言ってたでしょ?

だからボクも言います、

ダメダメーー、泥がついた靴は、お部屋の外よ!!」

(これを1日40回聞かされる)


だけどペリグリーノたちは20キロ30キロ歩いて疲れきっているため

たいていの人が笑った。

(↑ よくある忘れ物、いびき騒音対策の耳栓)


趣味は読書。硬派、自称シャイ。

シガレットとコーヒーがあれば生きていけるらしく、

携帯も持っていなかった。

ふだんから家電話しか使っておらず、連絡は手紙派だって。

裸足が好きだといって、町へ出る時も裸足だったから

一緒に歩いていて変な気分だった。


だけど仕事はおそろしくまじめで

掃除もいつも率先してやっていた。


なんだかんだ助けられた。

それにひきかえ、わてがジュリアンにしたことといえば、

わての色落ち系モロッコズボンを洗濯機に入れて

ジュリアンの白いTシャツを青く染めてしまったことぐらいだ。


私とは

スペイン語が未熟という

共通点以外見当たらなかったけど、

わてがこのアルベルゲを去る日、

ジュリアンに別れの挨拶をし

「寂しくなるよー」と言ったら

「君が思う以上にボクも寂しくなる」といった。

I will miss you more than you miss me.

はっ、、、、、わてもこのセリフ時々使う!!


「いくらなんでも9月10日に仕事が始まるまでにはフランスに帰るよ。

勤めて12年になるホテルで

よくしてもらってるんだ」といっていたのに

この冬を、アルベルゲで乗り越えることにしたらしいジュリアン。

冬はペリグリーノが減ってやることがないし、雨が多くて寒い。

しかし今も、アルベルゲでウクレレを練習したりして

過ごしているらしい。

給料も出ないのに大丈夫か?


なんでフランスに帰りたくないんやろーか?

だけど、行き場不明のわて的には

「ずっと置いてもらえるのか、いーなー」

とちょっと思った。


ブエンカミーノ、ジュリアン♪